20代社員のメンタルヘルス危機――企業が今すぐ取り組むべき課題と解決策 お役立ちコラム2025.03.05

企業経営において、メンタルヘルス対策は避けて通れない重要なテーマとなっています。かつては30代に多かったメンタルヘルスの不調が、今では20代の若手社員に急増しているのが現状です。離職率の上昇や生産性低下といった経営リスクだけでなく、企業のブランド価値や組織の健全性にも大きな影響を与えています。
本コラムでは、若手社員のメンタルヘルス不調の原因を分析し、企業がとるべき実践的な対策を解説します。さらに、法的義務とその課題を整理し、形骸化を防ぐための施策を提案します。
この記事でわかること
- 20代のメンタルヘルス不調の主な原因とその影響:業務負荷、キャリア不安、デジタル環境のストレスが増加している。
- 企業が果たすべきメンタルヘルス対策の法的義務と課題:ストレスチェックや産業医制度の実施と、その形骸化を防ぐ方法。
- メンタルヘルス対策として最も効果的なアプローチ:心理的安全性の確保と、早期発見・早期介入の仕組み作り。
- すぐに実践できる具体策:研修、EAP導入、ハラスメント防止策など、職場改善のためのアクション。
1.20代に増加するメンタルヘルス不調
近年、若手社員のメンタルヘルス不調が急増しています。厚生労働省の調査によると、20代のうつ病・適応障害の発症率は増加傾向にあり、約36%が退職に至っている というデータがあります。
かつては30代の管理職になり始める層が最も影響を受けていましたが、現在は 若手社員の業務負荷の増加、キャリア不安、デジタル環境の影響 などが大きな要因となっています。
2.20代のメンタル不調の要因
(1) 業務過多とキャリアへの不安
企業競争の激化により、新入社員や若手にも 即戦力としての成果 が求められるようになりました。しかし、十分な育成機会がないまま高い業務負荷を抱えることで、「この仕事を続けられるのか?」「成長の機会はあるのか?」というキャリア不安を感じる人が増えています。
(2) デジタル環境によるストレス
スマートフォンやSNSの普及により、仕事とプライベートの境界が曖昧になり、常にストレスを感じる環境 になっています。SNS上での比較による焦燥感や、長時間のスクリーンタイムが脳機能に悪影響を及ぼすことも懸念されています。
(3) 職場環境と心理的安全性の欠如
心理的安全性が低い職場では、上司や同僚に相談しにくく、ストレスが蓄積しやすい 状況が生まれます。また、ハラスメントや評価制度の不透明さも、メンタルヘルスの悪化を引き起こす要因となっています。
3.本人・周囲・上司の役割――何ができるのか?
(1) 本人ができること:ストレスマネジメントの習慣化
- ストレスの原因を可視化し、日々のセルフケア(睡眠・運動・食事)を徹底する。
- 相談できる環境を確保する(信頼できる同僚・家族・カウンセラーと定期的に話す)。
- 「完璧である必要はない」 という認識を持ち、過度な自己責任感を減らす。
- 必要に応じて産業医やEAP(従業員支援プログラム)を活用する。
(2) 周囲の役割:心理的安全性を高める
- 「大丈夫?」と声をかけること を習慣化し、困ったときに相談しやすい環境を作る。
- 業務の偏りをなくし、チームで助け合う文化 をつくる。
- 職場でのハラスメントを見逃さず、積極的に防止する行動をとる。
(3) 上司の役割:早期発見・早期介入を徹底
- 定期的な1on1ミーティングを実施し、部下の心理状態を把握する。
- 「最近元気がない」などの小さな変化を見逃さず、必要に応じて産業医面談を促す。
- 無理に頑張らせるのではなく、適切に業務負荷を調整する。
- ハラスメント防止策を理解し、部下が相談しやすい環境を整える。

4.企業の法的義務とその課題
(1) ストレスチェック制度(労働安全衛生法)
- 義務:50人以上の事業場は、年1回のストレスチェックを実施。
- 目的:高ストレス者の特定と職場環境の改善。
- 課題:チェック自体は行われているが、職場環境の改善にはつながっていない企業が多い。
(2) 産業医の選任(労働安全衛生法)
- 義務:50人以上の事業場は産業医を選任し、健康管理指導を実施。
- 目的:過重労働者へのフォローや面談。
- 課題:形式的な対応になりがちで、実際に従業員が活用できる機会が少ない。
(3) パワハラ防止法(労働施策総合推進法)
- 義務:2022年4月より全企業に適用され、パワハラ防止措置が義務化。
- 課題:相談窓口の設置だけでなく、実効性のあるハラスメント対策が求められる。
(4) 長時間労働の是正(働き方改革関連法)
- 義務:時間外労働の上限規制を設定(原則月45時間、年360時間)。
- 課題:表向きは守られていても、業務量が減らず「隠れ残業」が発生するケースがある。
5. 企業が取り組むべき「最も効果的な対策」
✅ 心理的安全性の向上~最も効果的な「予防策」~
心理的安全性とは、社員が「意見を出しても否定されない」「ミスをしても責められない」という安心感を持てる職場環境のことです。この環境が整うことで、ストレスを感じにくくなり、メンタルヘルス不調を未然に防ぐこともできます。
具体的な取り組み
- 管理職向けの心理的安全性研修を実施:上司が部下の話を傾聴し、意見を尊重する姿勢を学ぶ。
- フィードバックの文化を育てる:失敗を責めるのではなく、「次にどう活かせるか」に焦点を当てる。
- ハラスメント防止策を徹底:パワハラ・モラハラがない職場を保証する。
- オープンなコミュニケーションの場を作る:1on1ミーティングや意見交換会を定期開催する。
✅ 早期発見・早期介入の徹底~最も効果的な「解決策」~
メンタルヘルス不調は、早期に気づき、適切な対応を取れば重症化を防げることが多いです。そのため、企業は「異変に気づく仕組み」を導入し、従業員が不調を抱え込まないようにすることが重要です。
具体的な取り組み
- ストレスチェック結果を実際の施策に活かす:形骸化せず、高ストレスと判定された人への産業医面談を実施。
- EAP(従業員支援プログラム)を導入:外部の専門家に匿名で相談できる仕組みを整備。
- 上司が部下の変化に気づける教育を実施」表情や勤務態度の変化を見逃さず、早期に声をかける。
- メンタルヘルス相談窓口の充実:安心して利用できる制度にし、周知を徹底。
6. まとめ:「メンタルヘルス対策は企業の未来を決める」
メンタルヘルス対策は、単なる福利厚生ではなく、企業の持続的成長に不可欠な経営戦略の一環です。社員が心身ともに健康であれば、生産性が向上し、組織のエンゲージメントも高まります。
心理的安全性の確保 によって、従業員が意見を自由に言える環境を整え、ストレスを軽減することができます。また、早期発見・早期介入の仕組み を構築することで、不調が深刻化する前に適切な対応をとることが可能になります。
企業は、ストレスチェックの形骸化を防ぎ、EAPの導入や管理職の教育を強化することで、組織全体の健康を支える必要があります。今こそ、企業の未来を守るために、実効性のあるメンタルヘルス対策を実施し、社員が安心して働ける職場環境を実現しましょう。
オーダーメイドの研修手法と運営で企業の課題解決をお手伝いするHuAdでは、企業理念の浸透と実践型研修、愛のある人材育成でインクルーシブな社会創りに貢献していきます。メンタルヘルス対策についても、ハラスメント研修や専門家講師と提携してのメンタルヘルス対策研修を実施しております。
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