“失敗を恐れる”新入社員に、どう向き合う? ― 育成に活かす5つの視点 お役立ちコラム2025.04.09

4月、新たに組織の一員となった新入社員たち。
フレッシュな姿勢と同時に、多くの人事・教育担当者が感じるのが「失敗を極度に恐れる」若手の姿です。
「怒られたくない」「評価を下げたくない」「迷惑をかけたくない」
そんな思いから、挑戦を避け、無難にこなそうとする姿勢が目立つことはありませんか?
けれど、私たちが本当に育てたいのは、「失敗しない社員」ではなく、「失敗を糧に成長できる社員」のはずです。
本コラムでは、「失敗=悪いこと」という一面的な捉え方から一歩踏み出し、
- やらなかったことによる“不作為の失敗”
- チャレンジによる“作為の失敗”
の違いを整理した上で、失敗を成長のプロセスとして捉え活かすための5つの視点をご紹介します。
◆ このコラムでわかること
- 新入社員が「失敗を怖がる」理由と、その背景にある不安心理
- 行動した結果の“失敗”が、成長を加速させる理由とその捉え方
- 失敗をどう捉えるかが、その後の行動や成果を大きく左右する理由(SEE-DO-GETの考え方)
- 若手社員が同じ失敗を繰り返さないために必要な「PDCA的学び方」
- 失敗をチームで共有することで心理的安全性が高まり、組織全体の力になる理由
1.「やらなかったこと」こそが失敗である ― 不作為と作為の違いを理解する
失敗には、大きく分けて「作為の失敗」と「不作為の失敗」の2種類があります。
前者は“やってみたけれど、うまくいかなかった”という行動の失敗。
後者は“やるべきだったのに、やらなかった”という判断や対応を怠った失敗です。
新入社員が言う「失敗が怖い」という言葉は、たいていこの“作為の失敗”を指しています。
「やってミスしたら怒られるのではないか」「評価が下がるのではないか」
そんな思いから、挑戦や提案を避け、安全策をとろうとする傾向が見られます。
けれど、ビジネスの現場では、“やらなかったこと”による失敗(不作為)こそが、最も避けたい失敗とされることが少なくありません。たとえば…
- 報告や相談をしなかったことで判断が遅れ、問題が深刻化した
- 明らかに改善できた場面でも、黙っていたことで機会を逃した
- やるべきことを後回しにした結果、納期や信頼を損なった
こうした失敗は、「行動がなかった」こと自体が問題視されるため、評価以前に信頼を損なうリスクがあります。
一方で、「行動したけれどうまくいかなかった」作為の失敗は、意図や背景が説明しやすく、学びや改善の材料になり得るものです。
同じ“失敗”でも、「やって失敗した」のか「やらずに失敗した」のかで、その意味は大きく異なります。
育成の現場では、まずこの違いを共有した上で、「行動すること」にこそ価値があるという考え方へと導くことが大切です。
では、なぜ“やってみた失敗”が成長につながるのか。次に、その理由を掘り下げていきます。
2.行動の失敗は“成長のプロセス” ― 若手に伝えたい失敗の価値
「失敗=悪いこと」と思っている新入社員にとって、「やってみて失敗した」経験は大きなストレスになることがあります。
しかし、私たちが育成の現場で伝えるべきなのは、「行動した上での失敗は、決して無駄ではない」という事実です。むしろ、それは成長に向かう過程において必要なプロセスであり、成功のための重要なステップです。
例えば、サッカー選手だったの本田圭佑氏は、「失敗は成功への過程にすぎない」と語っています。
つまり、“うまくいかなかった”という出来事自体ではなく、そこから何を学び、どう変化するかが本質なのです。
実際、ビジネスの現場でも、最初から完璧な成果を求めているわけではありません。
上司や先輩が見ているのは、「考えて行動したか」「そこから学びがあったか」「次に活かそうとしているか」といったプロセスの姿勢です。
一方で、行動しなければ、失敗もしませんが、学びもありません。
その場は無難に乗り切れても、成長の機会を見送ることになってしまいます。
だからこそ、「失敗していい」「やってみよう」「動いてみることに価値がある」というメッセージを育成の中でしっかりと伝えていくことが重要です。
“正解”ではなく、“挑戦”に価値がある。この前提があることで、新入社員の思考も行動も、確実に前向きな方向へと変わっていきます。
3.失敗の“見方”が行動を変える ― SEE・DO・GETで考える成長のサイクル
同じ失敗を経験しても、それを「どう捉えるか」によって、その後の行動や結果は大きく変わります。
これは、私たちHuAdのコラムでもご紹介している「SEE・DO・GET」という考え方に通じます(参考コラムはこちら)。
このモデルでは、
SEE(見方)➡ DO(行動)➡ GET(結果)
の3つが連動しており、私たちは常に「見方」に基づいて行動し、その行動から結果を得ていると考えます。
たとえば、ある新入社員がプレゼンに失敗したとき――
- 「自分はダメだ」「失敗=恥ずかしいこと」といったネガティブな見方(SEE)をしてしまえば、
→ 発言を控えるようになり(DO)、
→ 経験を積むチャンスを逃してしまう(GET) - 一方で、「これは成長のチャンス」「次は工夫できる」といった前向きな見方があれば、
→ 改善に取り組み、再度挑戦する(DO)、
→ 実力や信頼の向上につながる(GET)
このように、失敗そのものよりも、それをどう“見るか”が結果を左右するのです。
新入社員が「失敗が怖い」と感じるのは自然なことですが、その背後には「失敗=評価が下がる」「信頼を失う」といった思い込み(SEE)が存在しています。
だからこそ、育成の場面では「失敗=発見」「失敗=挑戦の証」といった前向きな見方を伝え、行動を後押しすることが重要です。
一度“見方”が変われば、行動が変わり、得られる結果も自然と変わっていきます。
失敗を減らすことではなく、「価値ある失敗に変えること」、それが育成の鍵になります。

4.同じ失敗でも「質」がある ― 学びを生む“良い失敗”とは?
前章では、「行動したうえでの失敗は、成長のプロセスである」とお伝えしました。
しかし同時に、すべての失敗が同じ価値を持つわけではないことも、育成の観点では重要なポイントです。
例えば、全く準備をせずに取り組んだ結果の失敗や、前回と同じミスを繰り返すような失敗は、「悪い失敗」として評価されることがあります。そこには学びが乏しく、改善の姿勢も見えにくいため、組織やチームとしても建設的に扱いづらいのです。
一方で、「事前に仮説を立てて準備し」「実行し」「うまくいかなかった結果を振り返って改善する」
こうした流れの中で生まれる失敗は、“良い失敗”といえます。これはまさに、ビジネスの基本サイクルであるPDCA(Plan→Do→Check→Act)に沿った失敗であり、学びを伴うからこそ成長に結びつきます。
重要なのは、新入社員に対して、「失敗を恐れず、まずやってみよう」というメッセージを伝えると同時に、
「事前に考え・準備すること」「同じ失敗を繰り返さないこと」も大切だとセットで伝えることです。 特にPDCAの“P(Plan)”、つまり仮説を立てて行動を計画する力は、良い失敗を生むための出発点になります。育成の場では、こうした“良い失敗”を正しく評価し、学びとして認める文化をつくることが大切です。
また、本人が振り返りを通して「気づき」を得られるよう、周囲が対話やフィードバックで関わることも、失敗を価値あるものに変えるポイントになります。できる」と思える関係性を生み出します。
5.失敗を共有することが、チームを強くする ― 信頼と学びの土壌をつくる
失敗は個人の成長にとって重要であるだけでなく、チーム全体の学びや信頼の基盤にもなります。その鍵になるのが、「失敗の共有」です。
多くの新入社員は、「失敗を知られるのが恥ずかしい」「迷惑をかけたと思われるのではないか」と感じ、自分の失敗を内に閉じ込めがちです。
しかし、それこそが“失敗の持つ価値”を半減させてしまいます。
一方で、失敗を素直に共有できる文化のある職場では、以下のようなポジティブな循環が生まれます。
- 他のメンバーが同じ失敗を避けることができる(組織的学習)
- 率直な発信が、職場の心理的安全性を高める
- 「チャレンジが歓迎される」という雰囲気が浸透する(挑戦意欲の醸成)
つまり、失敗の共有は「反省会」ではなく、「前進するための資産化」なのです。
とくに新入社員のうちは、うまくいかなかった経験を自分だけのものにせず、「こうすればよかったと思います」と周囲に話すことが、信頼を得る第一歩になります。
また、先輩社員が自らの失敗談をオープンに語ることで、若手にも「話していいんだ」という安心感が生まれます。
このようにして、心理的安全性の高い環境が少しずつ形作られていきます。
育成の観点でも、「共有することが責任感であり、チーム貢献である」という価値観を早い段階で伝えておくことで、“失敗を隠す”から“学び合う”へという健全な空気を育てることができます。
まとめ:失敗を“恐れるもの”から、“活かすもの”へ
新入社員が「失敗が怖い」と感じるのは、誰もが通る自然な反応です。
しかし、ビジネスの現場においては、やらなかったこと=不作為の失敗こそが、最も避けるべきものであり、行動した結果としての失敗=作為の失敗は、むしろ成長の糧として歓迎されるべきものです。
その上で私たちが育成の中で意識したいのは、単に「失敗してもいい」と伝えるのではなく、
- 事前に考え、準備をして挑戦すること(Plan)
- 失敗の見方を前向きに変えること(SEE・DO・GET)
- 学びに変える姿勢を持つこと(PDCA)
- チームで共有し、心理的安全性を高めること
こうした観点を通じて、失敗を“恐れるもの”から“活かすもの”へと変換する支援が必要です。
失敗しない社員ではなく、失敗を学びに変えられる社員を育てる――
それこそが、今の時代に求められる新入社員育成の本質ではないでしょうか。
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