内発的動機と外発的動機の違いとは?企業研修・人材育成で見落としがちな“やる気の継続”の本質 お役立ちコラム2025.04.16

社員のやる気が続かない。モチベーションにムラがある――。
こうした課題に直面している企業が、今あらためて注目しているのが「内発的動機」と「外発的動機」の違いです。報酬や評価といった外からの働きかけ(外発的動機)に比べ、自分の内側から湧き上がる興味や意欲(内発的動機)は、継続的な行動につながりやすいとされています。しかしその一方で、「内発的動機があるのに、心が折れてしまう」こともあります。
本コラムでは、内発的動機と外発的動機の違いを整理しながら、企業が見落としがちな“その先の課題”と、内発的動機づけを支える研修の可能性について紐解いていきます。
◆ このコラムでわかること
- 内発的動機と外発的動機の違いと、それぞれが効果を発揮する場面
- 内発的動機が強い人ほど「心が折れてしまう」ことがある理由
- モチベーションを持続可能な力に変える「レジリエンス」の考え方
- 内発的動機とレジリエンスを支えるために、職場や人事ができる関わり方
- 内発的動機づけを促進する研修の設計ポイントと可能性
1.やる気の“源”はどこにある?――内発的動機と外発的動機の違い
私たちが何かに取り組むとき、必ずそこには“動機”があります。
その動機がどこから生まれているのかによって、行動の質や継続力、成果へのつながり方は大きく異なります。
動機には大きく分けて2つの種類があります。
それが「外発的動機」と「内発的動機」です。
■ 外発的動機とは?
外発的動機とは、報酬や評価、罰や指示などの外部からの刺激によって動く動機のことです。
例えば…
- 「ボーナスのために結果を出したい」
- 「上司に評価されたいから努力する」
- 「怒られたくないからやる」
といったように、「どう見られるか」「何が得られるか/失われるか」が行動の原動力になっています。
この外発的動機は、特に行動を始める“きっかけ”として有効であり、
目標管理制度やインセンティブ、評価制度なども、組織でよく活用されています。
とくに新入社員や未経験領域に取り組む際など、「まだ内的な動機が育っていない段階」では、一定の役割を果たします。
ただし、報酬や評価がなくなれば行動も止まりやすく、義務的にやらされているという意識が強くなると、継続的な成長や創造性、自律性の発揮にはつながりにくいという限界もあります。
■ 内発的動機とは?
一方の内発的動機とは、報酬や評価とは関係なく、自分の内面から湧き上がる興味・関心・価値観・やりがいによって行動する状態を指します。
例えば…
- 「この仕事が面白いからもっと学びたい」
- 「人の役に立てることにやりがいを感じる」
- 「自分の成長を実感できるのが楽しい」
- 「あのときの悔しさを糧に、今度こそ結果を出したい」
こうした思いは、他者に強制されることなく、自ら学びに向かったり、積極的に改善提案を行ったりするような行動の原動力となる内面的なエネルギーに支えられています。 特に最後のような“ハングリー精神”は、行動を強く後押しする力にもなります。
■ 成果や目標達成という視点で、より重要なのは?
この2つの動機づけには、それぞれの役割があります。
ただし、仕事における成功や目標達成という視点で考えると、より重要なのは「内発的動機」です。
内発的動機に基づく行動は、以下のような特徴を持ちます。
- 物事を継続する力がある
- 自ら改善しようとする工夫や創造性が生まれる
- 周囲との協働にも前向きになれる
- 成果が出なかったときでも、自分の意志で立ち直ろうとする
つまり、目標に向かって主体的に取り組む、学び続ける、改善に取り組むなどの“質の高い行動”を継続的に生み出す土台となるのが、内発的動機なのです。
■ ただし、強い思いが“折れる”こともある
とはいえ、「内発的動機があれば常に安定して前進できる」というわけではありません。
むしろ、強い思いがあるからこそ、うまくいかなかったときのダメージも大きくなることがあります。
たとえば、「必ず結果を出したい」「期待に応えたい」といった熱意や責任感が強い人ほど、 壁にぶつかったときに「自分には無理だったのかもしれない」と、自信を失ってしまうことも少なくありません。
強い内発的動機が、時にプレッシャーや自責の要因となり、“心が折れてしまう”こともある。
これは、例えば「目標に対して強くコミットしていた社員が、思うような成果が出ず突然モチベーションを失った」といったように、現場でもしばしば見られる具体的な現象です。
次章では、この「内発的動機があるのに折れてしまう」状態に焦点を当て、
その背景と乗り越え方、そして育成や研修のあり方について考えていきます。
2.内発的動機があるのに、なぜ“折れてしまう”のか?
内発的動機は、行動の持続性や成果との結びつきにおいて非常に有効です。ところが実際の現場では、内発的動機を持っていたはずの社員が、途中で挫折したり、燃え尽きてしまったりするケースが少なくありません。なぜ、やる気があるはずの人が、思いがけずモチベーションを失ってしまうのでしょうか。
■ 理由1:「強すぎる思い」がプレッシャーに変わる
内発的動機には、ポジティブな感情だけでなく、悔しさ・劣等感・義務感といったネガティブな感情が原動力になっていることもあります。
例えば…
- 「過去の失敗を挽回したい」
- 「あの人よりも成果を出したい」
- 「家族やチームに迷惑をかけたくない」
これらも確かに内発的動機ですが、背負っているものが大きい分、失敗したときのダメージも大きくなります。「これがうまくいかなかったら、自分には価値がない」といった思考に陥ると、モチベーションは一気に崩れてしまいます。
■ 理由2:「やりたい」ではなく「やらねば」で動いている
内発的に見える動機でも、実は「やらねばならない」という義務感にすり替わっている場合があります。たとえば、「成長したい」という言葉の裏に「そうしなければ評価されない」という不安が潜んでいるケースです。
例えば…
- 「成長したい」と言いながら、実は「成長しないと周囲から遅れを取る」と感じている
- 「貢献したい」と思いつつ、実際は「貢献しないとチームに居づらくなる」から行動している
このように、自分の意志で選んでいるようで、実は“選ばされている”感覚があると、心のどこかに無理が生じます。
そしてその無理が続いたとき、ふとした瞬間に糸が切れてしまうことがあるのです。
■ 理由3:がんばり続けることが「当たり前」になっている
真面目で責任感の強い人ほど、「やる気を持ち続けるのが当たり前」と考えてしまいがちです。しかし、どんなに内発的動機が強くても、人は疲れます。迷います。揺らぎます。
にもかかわらず、頑張れなくなった自分に対して「甘えているのでは」「自分は弱い」と責めてしまうと、 回復のきっかけすら見失ってしまいます。
■ モチベーションが続かないのは意志の弱さではない
内発的動機があるにもかかわらず、気力を失ってしまう現象は、決して本人の「意志の弱さ」によるものではありません。心理学では、過度の自己期待や失敗回避傾向がモチベーションの低下を引き起こすことが知られており、特に真面目で責任感の強い人ほどその影響を受けやすいとされています。 むしろ、まじめで責任感が強く、内省的な人ほど、強く揺らぎやすいという特性があります。
そして、そうした“心が折れたとき”にどう立て直すかこそが、次のテーマになります。
次章では、内発的動機を支える「折れにくさ」「立ち直る力」の正体――レジリエンス(心理的回復力)について解説していきます。

3.カギとなるのは“レジリエンス”――折れた心を立て直す力
困難や挫折に直面したとき、自分をどう立て直すか――それを左右するのが「レジリエンス(心理的回復力)」です。
レジリエンスとは、一度折れても、しなやかに戻り、再び前を向いて行動できる力のこと。ビジネスの世界でも、変化や逆境が当たり前となった今、注目が高まっています。
■ レジリエンスは“折れない心”ではない
「レジリエンス」と聞くと、つい“強さ”や“打たれ強さ”といった印象を抱きがちですが、実際には「感情を否定せず受け止めたうえで、柔軟に意味づけを変え、再起していく力」です。
つまり、感情の揺れや落ち込みを経験しながらも、そこにとどまらず、しなやかに回復するための内的なプロセスを持っている状態です。
具体的には、次のような力の組み合わせによって支えられます:
- 自分の状態や感情に気づく「自己認知力」
- 起きたことを多面的に捉える「柔軟な意味づけ」
- 感情をため込まず整理できる「感情マネジメント力」
- 必要なときに周囲を頼れる「関係構築力」
- 小さな成功を積み重ねることで育つ「自己効力感」
■ 内発的動機とレジリエンスは“表裏一体”
内発的動機の強い人ほど、理想を高く持つ傾向があります。
それ自体は素晴らしいことですが、現実とのギャップが大きいほど、失敗や停滞の際に強く揺らいでしまうリスクもあります。
だからこそ、「やる気」を持ち続けるには、それを支えるレジリエンスが必要不可欠なのです。
レジリエンスがあれば、
- 「自分には無理かもしれない」→「一度失敗してもまた挑戦できる」
- 「期待に応えられなかった」→「今の自分に必要な学びが得られた」
と、意味の転換ができ、前向きに立ち直ることができます。
■ レジリエンスは育てられる
「レジリエンス=性格や気質」と思われがちですが、実際には経験や環境によって育てることができます。
特に職場では、次のような日常の取り組みがレジリエンスの醸成につながります。
- 感情や出来事を振り返る「内省」の習慣化(1on1や日報など)
- 成功・失敗に関わらず「経験を言語化し、共有する場」
- 「完璧でなくていい」と思える職場の安心感
- 上司や同僚からのフィードバックや承認
このような土壌があることで、内発的動機で動く社員が「折れずに、戻ってこられる」環境が整っていきます。
次章では、レジリエンスと内発的動機の両方を支えるために、研修が果たせる具体的な役割と設計のヒントを紹介します。
4.内発的動機づけは、研修で育てられる
「内発的動機は、生まれつき意識の高い人だけが持っているもの」 そう捉えられがちですが、実際には誰の中にもその芽は存在し、環境や関わり方によって引き出すことができます。 そして、そのきっかけとなり得るのが、研修の場です。
■ 研修でできること:気づき・意味づけ・対話の促進
内発的動機が引き出されるためには、「自分で選んでいる感覚(=自律性)」が不可欠です。 研修は、外から何かを教え込むのではなく、自分の価値観や意志を見つめ直し、「何のために働くのか」「なぜこの行動が必要なのか」といった内面の意味づけを見出す場として機能します。
例えば次のような設計が効果的です:
- 自分の強みや価値観を整理するワーク
- 経験を言語化し、意味づけを深める振り返り対話
- モチベーションの源泉を自分で再発見する自己分析
- 周囲との相互作用から視野を広げるグループワーク
「学んで終わり」ではなく、「自分の中で納得し、次の一歩を考える」構造を設計することで、内発的動機の芽が育ちやすくなります。
■ レジリエンスも視野に入れた設計がカギ
前章で述べたように、内発的動機があっても、折れてしまうことがあります。 そのため、研修の中では「気づきを与える」だけでなく、「折れたときに戻ってこれる力=レジリエンス」を育む要素も大切です。
具体的には:
- 挫折経験の共有や対話を通じて、共感と安心感を育てる
- 感情を言語化するワークで、自分の内面に気づく習慣をつくる
- 小さな成功体験を持ち帰れる設計にする(例:研修中の小課題や実践)
こうした要素を盛り込むことで、「気づき→実践→揺らぎ→再起」というプロセスを支える研修になります。
■ 自律的に動ける人材を育てるために
変化が激しく、正解がない時代において、企業が求めるのは「指示されなくても動ける人材」です。 その鍵となるのが、外から動かすのではなく、内側から湧き出す“やる気”と、それを継続させる“しなやかさ”。
その両方を支えるのが、内発的動機とレジリエンスです。
これからの人材育成は、スキルや知識の習得だけでなく、「内側の動機を育てること」と「それを守る力を養うこと」にも焦点を当てる必要があります。
研修はその入口として、十分に機能します。 企業が本気で「人が育つ組織」をつくろうとするなら、ぜひこの視点を人材開発の中に取り入れてみてください。
まとめ
やる気を引き出す方法として、外から与える動機づけ(外発的動機)と、自らの内側から湧き上がる動機(内発的動機)があります。
企業において、長期的な成果や主体性を引き出すには、内発的動機をいかに高め、支えていくかが重要です。
とはいえ、内発的動機があれば万事うまくいくわけではありません。
強い思いを持つ人ほど、葛藤や挫折に直面したときに、深く揺らぐことがあります。
だからこそ必要なのが、「折れても戻ってこられる」心のしなやかさ=レジリエンスです。
これからの人材育成には、単にモチベーションを引き出すだけでなく、
その想いを継続可能な力として支える仕組みが求められています。
内発的動機とレジリエンス――この2つを両輪とした人材開発のあり方が、変化の時代を生き抜く組織の力になるはずです。
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